相続財産(遺産)を守る専門家(弁護士・税理士)が解説!

相続の専門家(弁護士・税理士)が教える相続の相談窓口│相続財産を守る会

相続の相談窓口

身元保証人の地位・責任は相続される?

投稿日:

身元保証人という言葉を聞いたことがありますでしょうか。身元保証人とは、「労使関係」において、労働者が、使用者に対して損害を与えたときの賠償債務などを保証する人のことをいいます。

相続のときには、プラスの相続財産だけでなく、マイナスの相続債務も相続によって承継される結果、連帯保証人の地位・責任(保証債務)なども、一括して引き継がれることとなっていますが、身元保証人の地位・責任は引き継がれるのでしょうか。

身元保証人は、「保証人」とはついているものの、「労使関係」という特殊な関係の中でのみ用いられる用語であるため、相続における取り扱いも特殊であり、「保証人の責任(保証債務)」とは別個に考えなければなりません。

今回は、身元保証人が死亡した場合に、その相続人が、身元保証人としての責任を相続によって負担することがあるのかどうかについて、相続に強い弁護士が解説します。

「遺産分割」の人気解説はこちら!

遺産分割

2019/1/17

両親が離婚した後も、別れた親を代襲相続できる?【相続Q&A】

今回の相続相談は、ご両親が離婚した後、母方が親権を有して、母方についていった子どもであっても、父方の相続について「代襲相続」をすることができますか?というご相談です。相続問題に詳しい弁護士が、Q&A形式で回答します。 両親が離婚した後でも、親子関係がなくならないことについては、こちらの相続Q&Aでも解説しました。今回はそれを越えて、別れた両親が既にお亡くなりになってしまった場合であっても、その両親に代わって祖父母の財産を「代襲相続」できるかどうかについてです。 「遺産分割」の人気解説はこちら! [toc] ...

ReadMore

遺産分割

2019/2/4

遺留分減殺請求訴訟とは?訴訟提起から判決までの流れ【弁護士解説】

相続人の最低限の相続分を確保するための「遺留分減殺請求」にまつわる争いごとを行うとき、話し合い(交渉・協議)や調停によっても解決できないときに利用されるのが「遺留分減殺請求訴訟(いりゅうぶんげんさいせいきゅうそしょう)」です。 遺留分減殺請求訴訟は、裁判所で行う訴訟手続きですので、訴状作成、証拠収集などの複雑な手続きは、弁護士にご依頼頂くメリットが大きいです。ただ、基本的な訴訟提起から判決までの流れや、依頼者に行って頂く準備などを理解しておいたほうがよいです。 遺留分の争いには、「取得した相続財産の評価」 ...

ReadMore

遺産分割

2019/1/30

相続における「養子」の全ポイントを弁護士がわかりやすく解説!

相続のとき養子がいることがありますが、養子がいるのといないのとで、相続手続きがどの程度変わるか、ご存じでしょうか。 養子は、「養子縁組」をすることで発生する身分関係ですが、相続と養子の関係について、「養子であっても、実子と同様に取り扱うもの」、「養子であることで特別扱いとなるもの」などがあり、相続の場面に応じて養子の取扱いを変えなければならないことがあります。 今回は、相続と養子の関係する問題点をすべて、相続に強い弁護士が解説します。 「遺産分割」の人気解説はこちら! [toc] 養子縁組をする場合としな ...

ReadMore

遺産分割

2019/2/9

相続分の譲渡は特別受益?遺留分侵害になる?【最高裁平成30年10月19日】

平成30年10月19日の最高裁判所判決で、遺留分の侵害が争われた事件において、「相続分の譲渡が『遺留分侵害』にあたるかどうか」という点について新しいルールが示されました。 この最高裁判決によれば、相続分の譲渡をした場合に、それが「贈与」にあたり、遺留分を侵害する可能性があるという判断が下されました。この判決の内容は、相続の生前対策や、遺留分をめぐる争いに大きな影響を与えます。 そこで、今回の解説では、最高裁平成30年10月19日判決で示された新しいルールと、最高裁の示した新しいルールと相続法改正を踏まえて ...

ReadMore

遺産分割

2018/8/7

配偶者の取り分が増加?2018年法改正と「持戻し免除の意思表示」

2018年法改正で、「持戻し免除の意思表示」について、重要な改正がありました。 この「持戻し免除の意思表示」ですが、一般の方にはなじみの薄い専門用語ですので、今回の解説は、よくあるご相談内容をみながら、解説を進めていきます。 よくある相続相談 亡くなった夫が、「一緒に住んでいた自宅を私に与える」という遺言をのこしてくれていました。 自宅をもらえるのはありがたいのですが、自宅をもらってしまったために、逆に、預金や株式など、生活に必要な資金を十分にもらえませんでした・・・。 私たち夫婦は高齢なので、どちらかが ...

ReadMore

[toc]

身元保証人の相続とは?

身元保証人とは、労使間において、労働者が、使用者に対して与えた損害の賠償債務など、労使間において労働者側が負う債務を保証する人のことです。通常は、両親などが身元保証人となることが多いです。

身元保証人が保障する、雇用契約上の損害賠償債務の中には、「不法行為」「債務不履行(契約違反)」のいずれによる責任も含まれます。

そのため、身元保証人の責任はかなり重いものとなることがありますが、会社側(使用者側)が、その地位を利用して労働者側(被用者側)に酷な保証を強制しないよう「身元保証ニ関スル法律」という法律によって、そのルールが厳しく定められています。

具体的には、身元保証ニ関スル法律により、身元保証人の責任は、その契約期間を、原則3年、最長5年とするものと定められています。

相続は、お亡くなりになった方(被相続人)の財産と債務とを包括的に、その地位ごと受け継ぎます。そのため、お亡くなりになった方(被相続人)が借金の保証人や連帯保証人となっていた場合、その地位・責任は、相続人に引き継がれます。

この点について、身元保証人に関して労働者側を保護するルールための制限を定めている身元保証ニ関スル法律にも、身元保証人の責任自体が相続されるのかどうかについての定めはありません。

身元保証人の地位は、相続されない

身元保証人の地位が、相続されるのかどうかは、相続人にとってはとても大きな問題です。というのも、身元保証人は、本人が会社に与えた損害を全て保証することになるため、相続されるとしたらとても大きな責任となるおそれがあるからです。

相続する財産よりも、相続する債務のほうが大きい場合には、「相続放棄」したほうがよいケースもありますが、相続放棄は「相続開始を知ったときから3か月」以内に家庭裁判所へ申述を行わなければなりません。

身元保証人も、連帯保証人と同様、「保証契約」の一種ではありますが、結論から申しますと、身元保証人としての地位は相続されません。さきほど解説したとおり、身元保証人の責任はとても重く、相続人が引き継ぐには酷だからです。

このことは、古い裁判例によって、次の通り明示されています。このように相続されない権利を「一身専属権」とも呼びます。

大審院昭和2年7月4日判決

身元保証契約は、特別の事情がない限り、当事者その人と終始し、相続人はこれを承継しない。

身元保証人は、当事者同士の信頼関係によって成り立つ関係であるため、当事者でない相続人にとっては、身元保証人としての責任は果たせないからです。この点が、「借金を返済する」ことによって誰でも責任を果たせる「連帯保証人」と異なります。

この裁判例にいう、例外的に身元保証人の地位が相続される「特別の事情」とは、相続人自身が、身元保証人の地位を相続することを認めていた場合などです。相続人自身が同意するのであれば、相続させても負担が過剰とはいえないからです。

注意ポイント

なお、マンションやアパートの連帯保証人は、一般的な用語で「身元保証人」と呼ばれることがありますが、今回解説する「身元保証ニ関スル法律」のいう「身元保証人」にはあたらず、原則どおり、相続の対象となります。

参 考
「連帯保証人」の相続と遺産分割については、こちらをご覧ください。

相続人は、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も相続する結果、親が有する、「連帯保証人」という地位も相続することになります。マイナスの財産を相続したくない場合には、家庭裁判所に相続放棄を申述するしかあ ...

続きを見る

既に発生した身元保証債務は、相続される

身元保証人の地位自体が、包括的に相続の対象となることはないのとは別に、身元保証人が生前のうちに既に発生していた保証債務は、相続の対象となります。

つまり、身元保証人となったご家族がいて、その人が生きている間に、保証をしなければならないような事態が起こってしまったときには、既に発生した保証債務は、単に「お金を払う」という、通常の債務と同様だからです。

具体的に、金銭支払い債務として具体化している場合には、通常の保証債務や借金・ローンなどと同様、相続債務として、相続の対象となります。

この場合、相続開始と同時に、法定相続分に応じて、遺産分割がされることになります。そのため、遺産分割協議の対象とはなりません。

したがって、この場合には、具体的に発生している身元保証債務の金額と相続する財産の金額によっては、相続放棄を選択すべき場合もあります。

参 考
相続する債務(借金・ローンなど)の調査は、こちらをご覧ください。

相続財産(遺産)の調査で忘れてはならないのが「借金の調査」です。プラスの財産もマイナスの財産もいずれも相続するため、借金調査の結果、借金の方が多い可能性がある場合、相続放棄・限定承認を選択する必要があ ...

続きを見る

相続問題は、「相続財産を守る会」にお任せください!

いかがでしたでしょうか?

今回は、「保証契約」の中でも特殊な、雇用関係でみられる「身元保証人」の地位が相続されるのかについて、相続に強い弁護士が解説しました。

今回の解説をまとめると、身元保証人の責任はとても重いため、個人間の信頼をもとにしており、身元保証人の死亡によって消滅し、相続はされません。ただし、既に発生して具体化した保証債務は、通常の金銭債務として相続の対象となります。

「相続財産を守る会」では、相続問題だけでなく、身元保証人の地位が相続の対象となるかどうかなど、お亡くなりになったご家族の労使関係など、生活のあらゆる面にかかわるサポートを、弁護士が丁寧に対応します。

ご相談の予約はこちら

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所は、銀座(東京都中央区)にて、相続問題、特に、遺言・節税などの生前対策、相続トラブルの交渉などを強みとして取り扱う法律事務所です。 同オフィス内に、税理士法人浅野総合会計事務所を併設し、相続のご相談について、ワンストップのサービスを提供しております。

-相続の相談窓口
-

Copyright© 相続の専門家(弁護士・税理士)が教える相続の相談窓口│相続財産を守る会 , 2023 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.