相続財産(遺産)を守る専門家(弁護士・税理士)が解説!

相続の専門家(弁護士・税理士)が教える相続の相談窓口│相続財産を守る会

遺産分割

遺留分侵害額請求権とは?遺留分侵害への対応が、法改正で変わる!

更新日:

相続問題が発生し、相続人間でトラブルになると、「もらえるはずの遺産がもらえなかった・・・。」という問題が発生します。

「もらえるはずの遺産」のことを「法定相続分」といいます。「民法」という法律に定められた、「相続できるはずの財産」のことです。

ご家族がお亡くなりになったとき、相続をあてにしていたのに、もらえるはずの遺産がもらえなかったら、どうしますか?

私たち弁護士のもとにも、次のような相続の相談が寄せられることがよくあります。

よくある相続相談


兄弟(姉妹)なのに、自分は全く遺産をもらえなかった。
亡くなった夫が、遺産のすべてを、夫が経営する会社を手伝っていた子どもに与えるという遺言書をのこしていた。
母が、財産のすべてを私たちの知らない人にあげるという遺言書をのこしていた。

特に、「遺言書」は、お亡くなりになったご家族の意思を尊重するために残すものですが、この「遺言書」によって、法定相続分が侵害されてしまうことがあります。

相続で遺産をもらうことができるのを予定して、住宅ローンなどを組んでいた場合、人生設計がくるってしまうことでしょう。

「遺留分減殺請求権」という方法によって、もらえるはずだった相続財産の一部を取り返すことができます。

注意ポイント

相続人が、もらえるはずだった相続財産の一部を取り戻すことができる「遺留分減殺請求権」は、2018年法改正によって改称されました。

2018年に相続法が改正され、「遺留分侵害額請求権」と名を変えた後も、相続されるはずの財産をもらえなかった相続人にとって、有効な手段です。

「遺産分割」の人気解説はこちら!

遺産分割

2018/11/12

遺産分割調停とは?申立てから調停成立までのわかりやすい手続の流れ

遺産分割調停とは、相続財産(遺産)の分割方法について、家庭裁判所において、調停委員の関与のうえで話し合いを行うことです。遺産分割協議が、いざ進めると相続人本人間だけでは思ったようにまとまらないとき利用すべき制度です。 ご家族がお亡くなりになる前は「親戚関係はうまくいっているから、相続トラブルは起こらないはず。」という家族間も、遺産分割調停が長引くケースも少なくはありません。遺産分割調停が長引くと、相続人は精神的に疲弊します。 よくある相続相談 遺産分割調停を、家庭裁判所に申し立てる方法、必要書類を知りたい ...

ReadMore

遺産分割

2018/12/29

遺留分減殺請求を弁護士に相談するメリット8つと、弁護士費用

遺留分減殺請求は、多くの相続手続きの中でも、難しい法律問題を含んでおり、「争続」にもなりやすいため、弁護士に相談・依頼したほうがよい手続であるといえます。 遺留分減殺請求権を行使すると、権利行使をされた相手方は、もらえる財産が少なくなることを意味します。このように限られた相続財産(遺産)の取り合いを意味する遺留分減殺請求は、相続手続きの中でも、特に揉め事が起こりやすいです。 そこで今回は、1人で簡単には解決できない場合に、遺留分減殺請求を弁護士に相談・依頼するメリットと、その際にかかる弁護士費用について、 ...

ReadMore

遺産分割

2019/2/4

相続財産に債務(借金・ローン)がある場合の遺留分の計算方法は?

相続によって取得する財産には、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も含まれます。 マイナスの財産には、お亡くなりになった方(被相続人)が生前にした借金や住宅ローン、自動車ローンや教育ローンなど、支払わなければならないあらゆる金銭が含まれます。これをまとめて「相続債務」と呼ぶことがあります。 民法に定められた、相続人が最低限相続できる財産である「遺留分」を計算するにあたり、相続債務も考慮に入れる必要があるのでしょうか。遺留分は相続財産をもらう権利ではあるものの、そもそも債務があれば、その分だけ遺留分も少な ...

ReadMore

遺産分割

2018/12/26

遺留分減殺請求の金額を増やすには?遺留分をより多くもらう方法

遺留分減殺請求を行うとき、現在の制度では、遺留分減殺請求を受けた人の選択で、現物で返還をするか、金銭で返還をするか(価額弁償)を選べることとなっていますが、2018年民法改正が施行されると、金銭の返還のみとなります。 いずれであっても、生前贈与や遺言による贈与などによってもらえるはずの相続財産が少なくなってしまったと考えて遺留分減殺請求を行う側にとっては、「できるだけ多くの遺留分をもらいたい。」「請求金額を増やしたい。」と考えるのではないでしょうか。 そこで今回は、遺留分として受け取れる金額を、できる限り ...

ReadMore

遺産分割

2019/1/5

生命保険金は遺産分割の対象?相続財産に含まれる?【弁護士解説】

ご家族がお亡くなりになったとき、遺族に対して生命保険(死亡保険金)が支払われるか確認してください。。生命保険の死亡保険金は、遺産分割協議を丸く収める目的や、相続税の納税資金の目的で、お亡くなりになる方が貯めていることがあるからです。 「争続」となる可能性のある揉める遺産分割協議などが、生命保険をうまく活用することによってうまく進めることができる場合も少なくありません。 遺産分割協議が揉めると長い時間がかかり、10カ月以内に納付しなければならない相続税の納税資金も準備できないといった危険な事態に陥らないよう ...

ReadMore

遺産分割

2018/11/13

遺留分減殺請求権の行使方法を、弁護士がわかりやすく解説!

相続が開始されたときに、相続財産をどのように引き継ぐ権利があるかは、民法に定められた法定相続人・法定相続分が目安となります。 しかし、お亡くなりになった方(被相続人)が、これと異なる分割割合を、遺言によって定めていた場合、法定相続人の法定相続分を少しでも権利救済する目的で設けられた制度が、「遺留分減殺請求権」です。 今回は、遺留分減殺請求権を行使するための方法を、相続に強い弁護士が順にわかりやすく解説します。 [toc] 相続財産を守る会を運営する、弁護士法人浅野総合法律事務所では、相続問題と遺産分割協議 ...

ReadMore

遺産分割

2018/10/30

法定相続分と割合を知り、相続で損しない方法を弁護士が解説!

法定相続分とは、その名のとおり、「法律」で定められた「相続分」のことをいいます。民法で、「誰が、どの程度の割合の相続財産を得ることができるか」ということです。 法定相続分は、お亡くなりになったご家族(被相続人)との続柄、関係性と、相続人の人数によって決まっています。 法定相続分は、遺言や生前贈与、寄与分などがなければその通りになりますが、侵害された場合には、「遺留分侵害額請求権(遺留分減殺請求権)」によって救済されます。 そこで今回は、相続で損しないために、法定相続分の意味と、割合についての詳しい知識を、 ...

ReadMore

遺産分割

2018/11/4

相続人になれない?「相続欠格」・「相続廃除」とは?違いは?

民法に、相続人になることができると定められている人のことを「法定相続人」といいます。法定相続人は、本来、必ず相続人になることができますし、相続権を侵害されても「遺留分」という考え方で守られています。 しかし、法定相続人であっても、相続人になることができない場合があります。被相続人側からしても、法定相続人であっても、どうしても相続人にしたくない、というケースがあるのではないでしょうか。 よくある相続相談 「相続欠格」と「相続廃除」の違いを知りたい。 被相続人の立場で、法定相続人から虐待を受けているため、相続 ...

ReadMore

遺産分割

2019/1/24

配偶者居住権とは?自宅に住み続けるための活用方法│2018年改正

今回は、持ち家の相続に関するお話です。不動産を所有する方の相続では、私たち相続財産を守る会の専門家にも、多くのお悩みが寄せられます。 高齢社会の進展にともなって、夫婦の一方が亡くなったときの、のこされた配偶者の年齢もまた、これまでより高齢化しています。高齢であればあるほど、「自宅に住み続けることができるか」は、死活問題です。 よくある相続相談 夫に遺言を残してもらい、一緒に住んでいた家を相続したが、預金を相続できなかったため生活費に苦しんでいる。 相続分どおりに分割協議をして、家を相続したが、その他の現預 ...

ReadMore

遺産分割

2019/2/9

相続分の譲渡は特別受益?遺留分侵害になる?【最高裁平成30年10月19日】

平成30年10月19日の最高裁判所判決で、遺留分の侵害が争われた事件において、「相続分の譲渡が『遺留分侵害』にあたるかどうか」という点について新しいルールが示されました。 この最高裁判決によれば、相続分の譲渡をした場合に、それが「贈与」にあたり、遺留分を侵害する可能性があるという判断が下されました。この判決の内容は、相続の生前対策や、遺留分をめぐる争いに大きな影響を与えます。 そこで、今回の解説では、最高裁平成30年10月19日判決で示された新しいルールと、最高裁の示した新しいルールと相続法改正を踏まえて ...

ReadMore

遺産分割

2018/12/2

相続放棄申述受理証明書とは?取得する必要あり?入手方法は?

相続放棄とは、相続人が、相続する権利を放棄することです。「相続しない」と宣言すること、と言ってよいでしょう。 相続をすると、亡くなった方のプラスの財産だけでなく、マイナスの財産、つまり借金・負債も引き継ぐため、亡くなった方が借金を多く抱えていた場合、借金を引き継がないために相続放棄を検討します。 相続放棄の手続きを家庭裁判所で行うと「相続放棄申述受理通知書」という書面が交付され、ほとんどの相続手続きはこの書面で進められます。 しかし、相続放棄申述受理通知書では足りず、「相続放棄申述受理証明書」を発行しても ...

ReadMore

遺産分割

2019/1/24

法定相続分を超える「超過特別受益」は、返還する義務がある?

お亡くなりになった方(被相続人)から、生前贈与などによって特別な利益を得た人は、その分を遺産分割のときに調整することとなります。これを「特別受益」といいます。 特別受益の考え方は、共同相続人間の不公平を正すために、相続財産(遺産)となるはずの財産をより多く得ていた方が、その財産を相続財産(遺産)に加算して清算するためのものです。しかし一方で、法定相続分を超える財産を生前に得ていたとき、特別受益の考え方では調整ができない場合があります。 そこで今回は、法定相続分を超える財産を、被相続人の生前に得ていた「超過 ...

ReadMore

遺産分割

2019/2/15

遺留分減殺請求の相手方・請求先・判断方法・順番は?【弁護士解説】

民法で定められた相続人(法定相続人)が、最低限相続によって承継することが保障されている相続分を「遺留分」といい、遺留分を侵害されたときに、多くの財産を入手した人に対して財産を取り返すために行使されるのが「遺留分減殺請求権」です。 ところで、遺留分減殺請求権を行使する相手方、すなわち、請求先は、誰なのでしょうか。「遺留分を侵害している相手方」に行うのが原則ですが、「遺留分の侵害のされ方」も様々に異なるため、相手方・請求先が誰か迷う場合があります。 例えば、遺留分を侵害する生前贈与、遺贈(遺言による贈与)が複 ...

ReadMore

遺産分割

2018/11/27

遺産分割に期限はある?相続で注意すべき「期限」を弁護士が解説!

「遺産分割」とは、亡くなった方(被相続人)の遺産を、相続人の間で分ける手続きです。 ご家族がお亡くなりになった後、多忙であったり、遺産分割協議が円滑に進まないまま放置されたりした結果、遺産分割が長期間にわたって行われず、不動産の登記が亡くなった方のままとなっているような事例があります。 結論からいうと、「遺産分割」自体に期限はありません。しかし、いつまでも遺産分割を行わずに放置しておくとデメリットも多くあります。というのも、遺産分割に付随するいくつかの相続手続きには、明確な期限があるからです。 そこで今回 ...

ReadMore

遺産分割

2018/11/11

遺産分割協議書の書式・ひな形サンプルのダウンロードと作成方法

ご家族がお亡くなりになると、相続財産(遺産)を得るためには、遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成しなければならない場合があります。 遺言がない場合や、遺言があるけれども、相続財産(遺産)の全てについての相続が記載されていないケースでは、相続人全員が協議に参加し、遺産分割協議書に実印を押印しなければ、相続財産の名義変更、処分ができません。 今回は、遺産分割協議書の作成方法を、書式・ひな形のサンプルをもとに、相続に強い弁護士が解説します。 ポイント 遺産分割協議書の書式例・ひな形のサンプルは、こちらからダ ...

ReadMore

遺産分割

2018/11/20

いとこが亡くなったら遺産を相続できる?いとこが相続する方法は?

一般的に、「相続」というと、親子関係で起こる相続をイメージされる方が多いのではないでしょうか。しかし、相続の中には、親子だけでなく、祖父母、孫、兄弟姉妹などが相続人となる場合があります。 「いとこ(従兄弟、従姉妹)」は、両親の兄弟の子のことをいい、4親等離れています。直接の親子関係にある「直系血族」に対して、「傍系血族」といいます。 いとこは、相続人となることができるのでしょうか。いとこが死亡したとき、相続財産を得られるのでしょうか。いとことの関係が仲良しの方も仲が悪い方もいるでしょうが、いとこが相続する ...

ReadMore

遺産分割

2018/10/25

法定相続人とは?法定相続人の範囲・順位と割合を弁護士が解説!

身近なご家族がお亡くなりになってしまったとき、「誰が財産を相続することができるのだろう。」と不安に思うことでしょう。 遺言・遺書などがのこされていたなど、お亡くなりになったご家族の意思が明らかでない場合には、相続をすることのできる人は、「法定相続人」とされています。「法定相続人」は、「民法」という法律で定められています。 法定相続人となることができるのは、配偶者(妻もしくは夫)、子、父母、兄弟姉妹ですが、ご家族の状況によって、法定相続人の範囲や、法定相続人が相続できる割合が変わってきます。 いざご家族がお ...

ReadMore

遺産分割

2019/2/20

持戻し免除の意思表示とは?遺留分との関係を、弁護士が解説!

お亡くなりになった方(被相続人)から生前に特別の利益を受けていた相続人がいる場合、「特別受益の持戻し計算」といって、特別受益分を、相続財産(遺産)に加えて計算することで、不公平を取りのぞくこととなっています。 しかし、この方法によると、被相続人が、ある相続人に対して特に多く財産を相続させるはずであったという意思が実現できなくなります。そこで活躍するのが「持戻し免除の意思表示」です。つまり、「特別受益であっても、持戻し計算はしなくていい」ということです。 「持戻し免除の意思表示」を行った場合、相続分の計算、 ...

ReadMore

遺産分割

2018/12/22

【書式付】遺留分減殺請求の内容証明の書き方・作成方法・注意点

遺留分減殺請求権とは、民法で認められた法定相続人のうち、兄弟姉妹以外(配偶者、子、孫、直系尊属)がもつ、遺言などによっても侵害されずに相続できる相続分のことをいいます。 生前贈与や遺言による贈与(遺贈)などによって遺留分が侵害されてしまったとき、遺留分減殺請求をするわけですが、この権利行使の意思表示を確実に相手方に伝えるために、「配達証明付き内容証明郵便」が利用されます。 内容証明郵便は、郵便局が取り扱う送付方法の中でも特殊なものです。そこで今回は、遺留分減殺請求権の行使を確実に行えるように、遺留分減殺請 ...

ReadMore

遺産分割

2019/1/30

相続における「養子」の全ポイントを弁護士がわかりやすく解説!

相続のとき養子がいることがありますが、養子がいるのといないのとで、相続手続きがどの程度変わるか、ご存じでしょうか。 養子は、「養子縁組」をすることで発生する身分関係ですが、相続と養子の関係について、「養子であっても、実子と同様に取り扱うもの」、「養子であることで特別扱いとなるもの」などがあり、相続の場面に応じて養子の取扱いを変えなければならないことがあります。 今回は、相続と養子の関係する問題点をすべて、相続に強い弁護士が解説します。 「遺産分割」の人気解説はこちら! [toc] 養子縁組をする場合としな ...

ReadMore

[toc]

遺産をもらえなかったら、どうしますか?

相続は、どのようなタイミングでやってくるか分かりません。

ご家族が亡くなった場合でも、あなたは長い間生活を続けていく必要があります。このとき、相続財産(遺産)をあてにすることとなるのではないでしょうか。

もし、亡くなった方の収入を頼りに生活していた場合、その後、どうやって生活していくかも考えなければなりません。

法定相続分とは?

亡くなった方の配偶者(夫、もしくは、妻)や子どもであれば、ふつうは、亡くなった方がのこした財産(遺産)のいくらかをもらうことができます。このことは、民法でも定められています。

民法で定められた相続分を「法定相続分」といい、なにもなければ、原則として法定相続分の財産をもらうことができます。この「法定相続分」な、相続財産(遺産)のうち、次の割合とされています。

ポイント

配偶者と子が相続人の場合
  • 配偶者の法定相続分:2分の1
  • 子の法定相続分:2分の1
配偶者と親が相続人の場合(子がいない場合)
  • 配偶者の法定相続分:3分の2
  • 親の法定相続分:3分の1
配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合(親も子もいない場合)
  • 配偶者の法定相続分:4分の3
  • 兄弟姉妹の法定相続分:4分の1

亡くなったご家族がのこすものはお金(遺産)だけではありませんが、家族のその後の生活を考えると、遺産をもらえるかどうかは、非常に大切な問題です。

法定相続分は必ずもらえるわけではない

しかし、亡くなった方の配偶者や子どもだからといって、常に遺産をもらえるわけではありません。「法定相続分」が、必ずもらえるわけではないのです。

相続財産(遺産)をもらえなかった人は、その後の生活を考えなおさなければならなりません。

あまり考えたくない事態ですが、大切にしていた人が自分に遺産をのこしてくれないとき、遺産をもらえる方法がないか、考える必要があります。

法定相続分がもらえないケースの例

「家族の仲が良い」こと自体、必ずしも当たり前ではありません。

夫婦仲が悪かったり、親が子どものうちの1人を特にひいきしているということも、決してめずらしくありません。

ご家族が亡くなった時に、自分に遺産をのこしてくれないのではないかと、考えておかなければならないでしょう。

夫と仲が良くありません。

離婚はしていないのですが、夫は別の女性と生活しており、亡くなった場合に私に財産をのこしてくれるとは思えません。

父は、社長です。自分の会社を弟にまかせています。

父が亡くなった時に弟が多めに遺産をもらうのは仕方ないと思っているのですが、私にも家族がいるので、遺産を全くもらえないのでは困ります。

このようなご相談も、私たち弁護士がよくお受けします。。

相続人の方の「遺産をもらう権利」を守るための制度として、民法には、「遺留分(いりゅうぶん)」という制度があります。次の章でくわしく解説します。

遺留分(いりゅうぶん)とは?

亡くなった方の相続人のうち、配偶者と子どもには、「遺留分(いりゅうぶん)」がみとめられています。

「遺留分」とは、亡くなった方がのこした財産のうち、一定の割合については相続人が受け取れるようにする、「遺産をもらうことができる権利」をみとめるという制度です。

「遺留分」の制度がある目的は、相続人の生活を守るためです。「遺留分」は、さきほど説明した法定相続分の半分(2分の1)とされています。

少しむずかしい話になりますので、具体例をあげて説明します。

たとえば・・・

亡くなったAさんが2000万円の財産(遺産)をのこしました。Aさんの相続人は、妻と子ども2人の、合計3人です。

2000万円の遺産のうち、半分の1000万円は相続人の「遺留分」、つまり、妻と子どもの合計3人が受けとることのできる財産として守られています。

妻の法定相続分は、1/2(つまり半分)ですので、妻は、1000万円のうち、半分である500万円を「遺留分」として守ることができるのです。

子どもの遺留分は、相続人の遺留分である1000万円から妻の遺留分である500万円を引いた残額500万円の1/2ずつ、つまり、それぞれ250万円ずつです。

つまり、この事例では、遺言などによって亡くなったAさんが他の人に財産をあげようとしても、妻は500万円、子どもはそれぞれ250万円ずつをもらう権利があるわけです。

では、次の章ではいよいよ、この遺留分という権利を守る方法について、弁護士が解説していきます。

遺留分を侵害されたときの対応は?

ここまでお読みいただければ、亡くなったご家族の配偶者(妻もしくは夫)や子どもであれば、「全く財産がもらえないことはない」ということを理解いただけたでしょう。

そこで、遺留分を侵害された場合に、どのように守ればよいか、具体的な方法を理解しておきましょう。

「遺留分侵害」とは?

遺留分がどのように守られるかを説明するために、「遺留分の侵害(しんがい)」について説明します。

「遺留分の侵害」とは、さきほど解説した相続人の「遺留分」が、遺言、生前贈与などの方法によって、相続人の手に入らないことをいいます。

さきほどの具体例で、「遺留分の侵害」について、再び解説します。

たとえば・・・

先ほど説明したとおり、Aさんの妻には、500万円の遺留分がみとめられます。Aさんの妻は、2000万円の遺産のうち、500万円を受けとる権利があります。

もし、Aさんが、亡くなる前に遺言をのこし、2人いる子どものうちの1人に、すべての相続財産(遺産)を相続させると書いた場合、遺言どおりだと、妻はまったく遺産を受け取れません。

Aさんの妻に遺留分としてみとめられているのは、500万円でしたね。遺言どおりに相続すると、Aさんの妻は、もらえるはずの500万円の遺留分ををもらえていないわけです。

この状態を、法的にいうと、Aさんの妻は、500万円分の「遺留分を侵害されている」ということです。

この例でみるとわかるとおり、遺留分がないと、亡くなったご家族の意思によっては、今後の生活が立ち行かなくなる方がでてきてしまいます。

遺留分を侵害された相続人ができること(遺留分減殺請求権)

「遺留分が侵害されている」場合、つまり、亡くなった方の配偶者や子どもが、もらえるはずの遺産をもらえなかった場合に、遺産をもらえなかった相続人は、誰に対して、どのような請求をすればよいでしょうか。

現在の民法では、遺留分を侵害された相続人(遺産をもらえなかった相続人)は、遺産をもらった人に対し、「その財産をわたしてください」と求めることができます。

この権利を、遺留分減殺請求権(いりゅうぶんげんさいせいきゅうけん)といいます。

たとえば・・・

先ほどの例に戻ります。

Aさんが子どもの1人に2000万円の遺産すべてを与えたため、Aさんの妻は、500万円の遺留分を侵害されました。

Aさんの妻は、遺産2000万円をすべてもらった子に対し、「500万円ぶんの財産をわたしてください」、と請求できるのが、遺留分減殺請求権です。

注意ポイント

ただし、「遺留分減殺請求権」の現在のルールでは、Aさんの妻は、500万円ぶんの「お金」をもらえるとは限りません。

Aさんの相続財産(遺産)2000万円が、不動産(2000万円の価値のある土地)だけだった場合、困ったことになります。

この場合、遺留分減殺請求を受けた子が、500万円のお金を払うことを選ばない限り、Aさんの妻が受け取ることができるのは「お金」ではなく「土地の持分(もちぶん)」となるからです。

その結果、Aさんの相続財産(遺産)である土地は、Aさんの妻と子の「共有」になります。

2018年法改正で、遺留分減殺請求権はどう変わった?

以上のとおり、遺留分を侵害された相続人は「遺留分減殺請求権」で、少なくとも「遺留分」相当額の財産を確保できます。

しかし、さきほどの例でもわかるとおり、「相続財産(遺産)の大部分が不動産である。」という場合には、現在の「遺留分減殺請求権」のルールでは、不都合が生じます。

遺留分を主張する人に渡すお金がないと、不動産の「共有」状態が生じます。

遺留分で争いになるほど仲がわるい相続人間が、不動産を共有して、将来、うまくやっていけるとは、到底思えません。

注意ポイント

相続財産(遺産)の中に不動産があっても、お金もたくさんあれば「遺留分」を主張する相続人にはお金を渡し、不動産は渡さなくて済みます。

この意味でも「生前対策」の重要性がわかります。

まとめ
2018年(平成30年)の相続法改正のまとめは、こちらをご覧ください。

平成30年(2018年)7月6日に、通常国会で、相続に関する法律が改正されました。 正式名称、「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」という法律が成 ...

続きを見る

現在の相続法の問題点

今の民法のルールでは、「遺留分減殺請求権」を行使したとき、遺留分を侵害された人は、遺留分を侵害した人がもらった財産そのものを受け取るのが原則です。

「相続人の生活を保護する」という目的からすれば、お金で受け取れたほうが良い場合もありますが、必ずしもお金で受け取れるとはかぎりません。

その結果、1つの遺産が、複数の相続人の共有(きょうゆう)となり、更なる争いの火種となったり、遺産を売却できなくなったりといった問題点が起こります。

「共有」とは、1つの物を、複数の人が一緒にもっている状態のことです。「共有」の場合、それぞれの人が「持分」を持ちます。

Aさんの妻は、自分の子どもに「相続財産をわたしてほしい」と求めているくらいですから、Aさんの妻と、不動産をもらった子の関係は、仲が良いとはいえないのではないでしょうか。

1つの不動産を、妻子2人で共有することとなると、この土地をめぐって更なる争いがおこる可能性は高そうです。

財産をあげた人、つまり亡くなった人にとっても、せっかく遺言書を作って財産を子ども1人にあげようとしても、その目的を達成できないことになってしまいます。

もし、Aさんの妻が、生活のためにお金が必要で、この土地を売りたいと考えても、共有している子の賛成がなければ、Aさんはお金がもらえません。

持分だけでは土地を自由に使うことができないので、Aさんの持分だけを買いたい、という奇特な人も見つかるかどうかわかりません。

「不動産を残すこと」に意味がある場合、たとえば、亡くなった方の事業用につかっていた不動産で、その事業を子どもが事業承継した場合などには、さらに問題は深刻です。

2018年法改正後のルール

これらの、現在の民法における「遺留分減殺請求権」の不都合により、遺留分を侵害された相続人ほ保護は、新しいしくみに変わります。

はじめに説明したとおり、遺留分を侵害されてしまった相続人の「生活の保障」が目的ですので、その目的に合った制度になります。

2018年(平成30年)7月13日に、相続に関する法律が公布されて、「遺留分減殺請求権」は、「遺留分侵害額請求権(いりゅうぶんしんがいがくせいきゅうけん)」という名前になりました。

「遺留分侵害額請求権」は、「お金だけを請求することができる権利」とされています。

2019年(平成31年)7月13日までには、新しいルールが適用されます

たとえば・・・

さきほどの例に再び戻ります。

Aさんが2000万円の遺産をのこした場合に、Aさんの妻は500万円の遺留分をもっています。

Aさんの遺産が不動産だけ(2000万円の価値のある土地)だったとしても、新しい制度では、Aさんの妻は、お金を請求することができるだけになります。

Aさんの妻は、不動産の持分をくださいと請求することはできなくなり、「500万円のお金をください」と請求するのが「遺留分侵害額請求権」です。

まとめ
2018年(平成30年)の相続法改正のまとめは、こちらをご覧ください。

平成30年(2018年)7月6日に、通常国会で、相続に関する法律が改正されました。 正式名称、「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」という法律が成 ...

続きを見る

遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)は、弁護士にお任せください

いかがでしたでしょうか。

今回は、「相続人としてもらえるはずの相続財産(遺産)がもらえなかった」というご相談について、弁護士がくわしく解説しました。

このお悩みを解決するための「遺留分減殺請求権」について、2018年7月の相続法の改正「遺留分侵害額請求権」という名になり、利用しやすくなりました。

「相続できるはず」と見込んでいた財産が、遺言書の発見などによって、そのとおりに実現しなかったとき、亡くなった方の配偶者(妻、もしくは夫)や子であるときは、財産をもらえる権利があります。

当会では、「遺留分減殺請求権(遺留分侵害額請求権)」について、豊富な相談実績のある弁護士がおります。

「遺留分」を侵害され、相続人に対する請求をすることをお考えの方は、ぜひ、「相続財産を守る会」にご相談ください。

当会では、相続人となった方の生活を守るためのサポートをおこなっています。

ご相談の予約はこちら

まとめ

いかがでしたでしょうか。

「遺留分」の考え方は、非常に難しいですが、できるだけわかりやすく、具体例をあげて解説しました。

今回の解説をご覧になっていただくことで、次のことをご理解いただけます。

解説のまとめ

「遺留分」とその侵害についての基本的な考え方
「遺留分」をもらえなかった場合の、相続人の救済手段
2018年の相続法改正によって、より活用しやすくなった「遺留分侵害額請求権」

相続財産を守る会では、相続に強い弁護士だけでなく、税理士、司法書士などの他の士業、不動産会社、FP、保険会社などが一丸となって、あなたの相続のサポートをします。

まずは、初回のご相談にて、あなたの置かれている状況をご説明いただき、オーダーメイドの相続のご提案をお受けくださいませ。

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所は、銀座(東京都中央区)にて、相続問題、特に、遺言・節税などの生前対策、相続トラブルの交渉などを強みとして取り扱う法律事務所です。 同オフィス内に、税理士法人浅野総合会計事務所を併設し、相続のご相談について、ワンストップのサービスを提供しております。

-遺産分割
-, , ,

Copyright© 相続の専門家(弁護士・税理士)が教える相続の相談窓口│相続財産を守る会 , 2023 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.