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遺留分の計算における「贈与」の取扱が変わる!(2018年改正)

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相続の際には、お亡くなりになった方がのこした遺言の内容などによって、受け取ることのできる財産が相続人ごとに異なり、不公平が生じる場合があります。

このような不公平を是正するために、民法上、配偶者や子などの法定相続人には、「遺留分」という、最低限の遺産の取り分が認められています。もっとも、遺留分の具体的な金額を計算するのは簡単ではありません。

もっとも、2018年(平成31年)の相続法改正によって、遺留分と遺留分侵害額の計算方法が、一部明確になりました。

今回の記事では、遺留分の計算方法をめぐる法改正のうち、被相続人がした贈与などの取扱いをめぐる改正の内容について、相続に強い弁護士が解説します。

参 考
2018年相続法改正の内容まとめは、こちらをご覧ください。

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遺留分とは?

遺留分とは、法律で法定相続人に認められた、遺産の最低限の取り分のことです。なお、遺留分の権利は、お亡くなりになった方(被相続人)の妻や子、両親には認められていますが、兄弟姉妹には認められていません。

まずは、遺留分の計算方法を簡単に解説すると、遺留分の額は、以下の計算式で計算されます。

遺留分額=遺留分算定の基礎額×総体的遺留分率×法定相続分

このうち、「遺留分算定の基礎額」は、ざっくり説明すると、お亡くなりになった方がもっていた財産の総額です。この「遺留分算定の基礎額」に、法定相続人の最低限の取り分ともいえる割合(=総体的遺留分率×法定相続分)をかけると、その法定相続人の遺留分を計算することができます。

「遺留分算定の基礎額」は、以下のように計算されます。

遺留分の算定基礎額=相続開始時の財産の額+被相続人が贈与した額-相続債務の額

「被相続人が贈与した額」を加えることとされているのは、被相続人が贈与した額も、元は被相続人の財産の一部であって、相続人間の公平を確保するために、特定の人が贈与された額も含めた遺産の取り分(遺留分)を計算するためです。

参 考
遺留分が認められる割合と計算方法は、こちらをご覧ください。

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遺留分を侵害された相続人の権利は?(現行法)

仮に、上の事例で、お亡くなりになった方(被相続人)が、遺言書の中で、「あの人にお世話になったから」といって、5000万円の財産すべてを贈与してしまった場合には、妻や子は、そのままでは全く財産を相続することができません。

妻や子には、上で解説したとおり、それぞれ1250万円、675万円の遺留分が認められているにもかかわらず、妻や子はそれに見合った財産を受け取ることができません。このような状況を、「遺留分の侵害」といいます。

このような場合、遺留分を侵害された法定相続人には、現在の民法のルールでは、「遺留分減殺請求権(いりゅうぶんげんさいせいきゅうけん)」という権利が認められます。

たとえば・・・

たとえば妻がこの遺留分減殺請求権を行使すると、5000万円の贈与のうち、1250万円分の贈与の効力が取り消されて、贈与の対象となった財産が、妻のものとなります。

仮に5000万円の財産がすべて預貯金だとすると、そのうち1250万円の預貯金が妻のものとなります。これによって、妻は、預貯金口座のある金融機関に対して、1250万円分の払戻しを求めることができます。

参 考
遺留分減殺請求を弁護士に依頼するメリットは、こちらをご覧ください。

遺留分減殺請求は、多くの相続手続きの中でも、難しい法律問題を含んでおり、「争続」にもなりやすいため、弁護士に相談・依頼したほうがよい手続であるといえます。 遺留分減殺請求権を行使すると、権利行使をされ ...

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遺留分を侵害された相続人の権利は?(2019年7月以降)

ただし、この権利の内容は、2018年の相続法改正によって、変更が加えられました。2019年7月1日以降にお亡くなりになった方の相続に関しては、上で解説した「遺留分減殺請求権」ではなく、以下で解説する「遺留分侵害額請求権」を行使することになります。

遺留分侵害額請求権も、遺留分を侵害された法定相続人の権利を守るという目的は、遺留分減殺請求権と変わりありません。

ただ、新しい「遺留分侵害額請求権」では、権利を行使した場合の効果が遺留分減殺請求権とは異なります。

ケース1

上の預貯金の例で解説した通り、遺留分減殺請求権を行使すると、遺留分を侵害された限度で(=妻の場合は1250万円の限度で)預貯金の贈与の効果が取り消され、預貯金債権についての権利が、贈与を受けた者から妻へと移動します。

これに対して、「遺留分侵害額請求権」を行使した場合には、権利を行使した妻は、贈与を受けた者に対して、金銭を請求することができるだけです。預貯金債権についての権利の移動の効果は生じません。この点が、今のルールとの大きな違いです。

預貯金債権では少し伝わりづらいかもしれませんが、相続財産が不動産であった場合を考えれば、大きな違いがあることが分かります。

ケース2

上の事例で、5000万円の財産が預貯金ではなく不動産であった場合、妻が「遺留分減殺請求権」を行使すると、1250万円の限度で、不動産についての権利が妻に移動します。具体的には、不動産に対して妻が1250万円分の持分をもち、贈与を受けた者が残り3750万円分の持分をもつ、「共有」の状態となります。

これに対して、新しい「遺留分侵害額請求権」を行使した場合には、不動産についての権利は移動せず、不動産の所有者は、贈与を受けた者のままです。妻は、1250万円の金銭を請求することができるだけです。

このように、現在の「遺留分減殺請求権」を行使すると、財産についての共有状態が発生するのですが、財産が共有状態になると、その管理をめぐってさらに紛争が生じる可能性もあります。このような事態を避けるというのが、法改正の一つの理由です。

参 考
「遺留分侵害額請求権」の基礎知識は、こちらをご覧ください。

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「被相続人が贈与した額」に含める生前贈与の時期(改正ルール①)

「被相続人が贈与した額」の計算ルールが、2018年の相続法改正で変わった部分です。項目を改めて、3つの改正ルールについて、くわしく解説します。

現在のルール

今の民法では、「遺留分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して、これを算定する」と定めています(1029条1項)。

その上で、民法1030条は、「贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。」と定めています。つまり、お亡くなりになった方が、相続開始の前(つまりお亡くなりになる前)1年以内にした生前贈与の額を、遺留分算定の基礎となる財産に含めることとしています。

ところが、現在の実務では、裁判所の示した判例に従って、贈与については以下のように取り扱っています。

ポイント

「相続人以外の第三者」に対して行った生前贈与は、民法1030条の条文どおり、原則として、相続開始前1年間の生前贈与の価額だけを遺留分算定の基礎額に算入する。

「相続人」に対して行った生前贈与については、民法1030条の条文とは異なり、生前贈与の時期を問わず、原則としてすべての生前贈与を、遺留分算定の基礎となる財産の価額に算入する。

つまり、相続人に対して行った生前贈与については、被相続人がお亡くなりになる前1年間に行われたものだけでなく、10年前、15年前に行ったものであっても、遺留分の算定基礎額に加えることとされているのです。

現在(2018年法改正前)のルールの問題点

ところが、この考え方によると、被相続人が亡くなる数十年前にした贈与であっても、遺留分の算定基礎額に含めるということになります。

数十年も前までさかのぼっていくと、お亡くなりになった方(被相続人)がした贈与の額というのは、非常に大きな金額になる場合があります。これをすべて加えて遺留分の額を計算すると、遺留分の額(すなわち法定相続人の最低限の取り分の額)が大きくなってしまます。

その結果、お亡くなりになる直前になされた贈与や、遺言書の中でなされた遺贈によって財産を受け取った方が、被相続人の意図した通りに財産を受け取ることができなくなってしまうおそれがあります。

このような理由により、2018年の法改正で、遺留分算定の基礎額に加える贈与の範囲があらためられました。

改正法のルール(2019年7月以降のルール)

上で解説した通り、現在のルール(2018年改正前のルール)では、遺留分算定の基礎額に加える「被相続人が贈与した額」は、相続人に対する生前贈与に関しては、時期の制限はありません(何十年も前の生前贈与であってもその金額を加えます)。

これに対して、改正法では、相続人に対する生前贈与について、原則として、次の2つの両方を満たす場合に限って、遺留分の算定基礎額に加えることとされました。

ポイント

その贈与が、婚姻もしくは養子縁組のため、または生計の資本としてなされた贈与であること

相続開始前の10年間にされたもの

1つ目の要件は、「特別受益(とくべつじゅえき)」と呼ばれるものです。このような特別の贈与に限って、遺留分の算定基礎額に加えることにされました。

参 考
相続財産のもらいすぎを「特別受益」で調整する方法は、こちらをご覧ください。

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なお、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与については、それ以前になされたものであっても、遺留分を算定するための財産の価額に算入されます。

相続人以外の第三者に対して行われた生前贈与の算入範囲については、今のルールと変わりありません。

したがって、新しいルールの下では、遺留分の算定基礎額に算入する生前贈与の範囲は、次の表のようになります。

生前贈与の相手方 遺留分の算定基礎額に加える範囲
相続人以外の第三者 原則として相続開始前1年間の生前贈与の価額のみ算入する(改正民法1044条1項)
相続人 原則として相続開始前10年間の、特別受益に該当する生前贈与を算入する

なお、「原則として」とあるのは、上の表には例外があるためです。具体的には、上の表の時期に含まれない生前贈与であったとしても、遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与であれば、その贈与についても、遺留分計算の基礎額に算入する必要があります。

負担付贈与と「被相続人が贈与した額」の計算(改正ルール②)

以上で解説した内容以外にも、2018年の法改正で、贈与があった場合の遺留分の計算方法について、明確にされています。一つは、負担付贈与があった場合の遺留分の計算です。

負担付贈与とは、例えば、「この不動産をAに贈与する。ただし、Aは、妻に500万円を払え。」というものです。贈与をするが、一定の負担を付けているという意味です。この負担付贈与があった場合の遺留分の計算方法が明確にされました。

これまでに解説した通り、遺留分の算定基礎額は以下の計算式で計算されます。

遺留分の算定基礎額=相続開始時の財産の額+被相続人が贈与した額-相続債務の額

改正法では、負担付贈与があった場合の「被相続人が贈与した額」は、以下のように計算することとされています。

被相続人が贈与した額=負担付贈与の目的の価額-負担の価額

上の例でいえば、「負担付贈与の目的の価額」は不動産の価値であり、「負担の価額」は妻に支払う金銭の価値(500万円)ということになります。

不相当な対価をもってした有償行為の場合(改正ルール③)

また、改正法では、不相当な対価で有償行為が行われた場合の、遺留分の計算方法も明らかにされました。

不相当な対価で有償行為が行われた場合とは、例えば、被相続人が、5000万円の不動産を第三者に500万円で売却したような場合です。売買の形をとってはいますが、実質は贈与に近いといえるような場合です。

改正法では、このような「不相当な対価をもってした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってしたものに限り、当該対価を負担の価額とする負担付贈与とみなす。」と定められています。

被相続人が、第三者との間で、遺留分権利者(妻や子などの法定相続人)の遺留分を侵害することを知りながら不当に安い価格で財産を売却したような場合には、上で解説した負担付贈与と同様に取り扱うという意味です。

上の例でいえば、不動産の価値である5000万円から売買代金500万円を引いた4500万円分を、負担付贈与と同様に、「被相続人が贈与した額」として、遺留分算定の基礎額に加えることになります。

法律改正ルールのまとめ

以上で解説した、「被相続人による贈与があった場合の遺留分の計算方法」についての改正内容をまとめると次のようになります。いずれも2019年7月以降に適用されるルールです。

ポイント

遺留分の計算に含める生前贈与の範囲の変更
相続人に対する贈与は、原則として相続開始前10年間の、特別受益に該当する生前贈与を算入する(改正前は時期の限定なし)。

負担付贈与があった場合の遺留分の計算方法
「負担付贈与の目的の価額」から「負担の価額」を控除した金額を、「被相続人が贈与した額」として遺留分の算定基礎額に加える。

不相当な対価をもってした有償行為があった場合の遺留分の計算方法
当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知って行われた場合に限り、売買などの「有償行為の目的の価額」から「対価の価額」を控除した金額を、「被相続人が贈与した額」として遺留分の算定基礎額に加える。

遺留分や遺留分侵害額の計算の際には、専門的な知識が必要となり、また、紛争になれば裁判に至る場合もあります。したがって、相続にくわしい弁護士に相談した上で権利を行使する必要があります。

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