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遺留分制度についての2018年相続法改正まとめ【弁護士解説】

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相続に関するご相談でよく問題となる点の一つが、「遺留分(いりゅうぶん)」です。遺留分(いりゅうぶん)とは、民法で法定相続人に認められた、相続の際の遺産の最低限の取り分のことです。

遺留分は、相続の発生前においても発生後においても、重要なポイントとなる制度です。

相続に関して生前対策をするとき、遺留分の検討が欠かせません。実際に相続が発生した場合に、相続人どうしで争いになることを防止するためです。実際に相続が発生後も、遺産を十分もらえなかった相続人から相談を受け、遺留分侵害があるか検討することもあります。

2018年の相続法改正で、遺留分制度にも改正がおこなわれ、改正内容は、2019年7月1日から適用されます。そこで、2018年の相続法改正で、遺留分に関する制度がどのように変わるのか、相続にくわしい弁護士がまとめて解説します。

参 考
2018年相続法改正の内容まとめは、こちらをご覧ください。

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そもそも遺留分とはどのような権利か?

遺留分(いりゅうぶん)とは、法定相続人の一部に法律で認められた、相続の際の遺産の最低限の取り分のことです。

たとえば・・・

夫の遺産が6000万円で、相続人が妻と3人の子どもである場合、妻と子どもには、それぞれ以下の金額の遺留分が認められます。

  • 妻:6000万×1/2×1/2=1500万
  • 子:6000万×1/2×1/6=500万

もし、夫が遺言書の中で、遺産すべてを第三者に与えてしまったような場合には、妻は、1500万円分の遺産をもらう権利があるにもかかわらず、遺産をもらえないことになります。このような状況を「遺留分の侵害」といいます。

この場合、妻には、法律で、夫から遺産をもらった第三者から遺産を取り戻す権利が認められています。3人の子も、それぞれ500万円の遺留分を侵害されていますので、同じ権利が認められます。

この具体例からわかるように、遺留分には、遺産の最低限の取り分を確保するという役割があります。

2018年法改正で何が変わるか?

2018年の相続法改正で、遺留分について何が変わるかを最初にまとめておくと、大きく分けて以下の3点です。

ポイント

【ポイント1】遺留分を侵害された場合の権利内容が変わる
遺留分を侵害された場合に相続人に認められる権利の内容が変わります。今の民法ではこの権利は「遺留分減殺(げんさい)請求権」と呼ばれていますが、改正法では、「遺留分侵害額請求権」という名前に変わります。

【ポイント2】遺留分の計算方法が一部変わる
法定相続人に認められる遺留分は、法律で、計算方法が定められています。この計算方法が一部変更になります。

【ポイント3】遺留分侵害額の計算方法が一部変わる
贈与や遺贈などによって法定相続人の遺留分が侵害されると、法定相続人には、侵害された額について、遺産を取り戻すための権利が認められます。この「侵害された額」の計算方法が一部変更になります。

以下では、個別の変更内容について、より詳しく解説していきます。

【ポイント1】遺留分を侵害されたときの相続人の権利内容の変更

まず第1に、遺留分を侵害された場合の権利の性質が変わります。今の民法で認められている権利と、改正法で認められる新しい権利について、解説します。

今の民法で認められる権利(遺留分減殺請求権)

遺留分を侵害された法定相続人には、贈与などを受けた者に対して、自分がもらえるはずだった財産を取り戻すための権利が認められています。

今の民法では、この権利は「遺留分減殺請求権」と呼ばれます。

法定相続人がこの遺留分減殺請求権を行使すると、権利行使の対象となった贈与が、遺留分を侵害している限度で効力を取り消されて、贈与の対象となった財産が、権利を行使した法定相続人のものとなります。

たとえば・・・

相続財産が8000万円の不動産だけで、法定相続人である妻の遺留分が2000万円だとします。

この場合、妻が遺留分減殺請求権を行使すると、妻は、その不動産について、2000万円分(つまり1/4)の持分を取得します。贈与を受けた方には6000万円(つまり3/4)の持分がのこりますので、不動産は、2名の共有となります。

この具体例からわかる通り、贈与などの効力(の一部)そのものを取り消すというのが、現在のルールの特徴です。

改正後の民法で認められる権利(遺留分侵害額請求権)

一方、2019年7月1日以降にお亡くなりになった方の相続に関しては、遺留分を侵害された場合には、「遺留分侵害額請求権」を行使することになります。

この新しい「遺留分侵害額請求権」は、権利を行使した場合の効果が遺留分減殺請求権とは異なります。

たとえば・・・

8000万円の不動産が贈与されたという先ほどの事例で、妻が遺留分侵害額請求権を行使しても、不動産についての権利は移動せず、不動産の所有者は、贈与を受けた者のままです。妻は、2000万円の金銭を請求することができるだけです。

新しい遺留分侵害額請求権は、贈与などの効果を取り消すことをせず、贈与などを受けた者に対する金銭の請求のみができるという権利です。遺留分制度は、法定相続人の生活保障などを目的としています。そうであれば、お金で解決すればよいというのが、改正の一つの理由になっています。

見方を変えれば、改正法のもとでは、遺言で誰かに財産を与えたいと思った場合に、それが法定相続人の遺留分を侵害するものであったとしても、財産を受け取った方がお金で支払うことができる限り、与えた財産を取り返されることはないともいえます。

【ポイント2】遺留分の算定方法の一部変更

2018年改正による改正点の2つめは、遺留分の計算方法が一部変わるという点です。

ある法定相続人に遺留分がどれくらいあるのかを知るためには、民法で決められた方法で遺留分を算定する必要があります。この計算方法が、一部変更されます。

遺留分の算定基礎額の計算方法

改正内容の説明の前に、遺留分の計算方法を簡単に説明しておきます。

法定相続人の遺留分を計算する際には、まず、「お亡くなりになった方(被相続人)がのこした財産がいくらあるのか」という点を計算する必要があります。これを「遺留分の算定基礎額」と呼ぶことにします。

そして、遺留分の算定基礎額を計算したら、法定相続人ごとに認められる遺留分の割合をかけます。それによって、遺留分が計算されます。

遺留分の算定基礎額は、「①被相続人が相続開始の時において有した財産の価額+②被相続人が贈与した財産の価額-③相続債務の額」という方法で計算します。

贈与の取扱いについての変更

遺留分の算定基礎額の計算の際に、「②被相続人が贈与した財産の価額」を加えるのは、贈与した財産も元はお亡くなりになった方の財産なので、その分も含めて法定相続人の最低限の取り分を計算するということです。

この「②被相続人が贈与した財産の価額」の計算方法に関して、以下の3点が改正されています。

ポイント

相続人に対する生前贈与の取扱い
「②被相続人が贈与した財産の価額」には、相続人に対する生前贈与が含まれます。これまでのルールでは、この生前贈与は、10年以上前のものでも計算に含めていたのですが、改正法では、計算に含める生前贈与の範囲が一定範囲に限定されました。

負担付贈与の取扱い
負担付贈与とは、「不動産を贈与するが、代わりにのこされた妻に500万円支払え」といった内容の贈与のことです。この負担付贈与があった場合に、「②被相続人が贈与した財産の価額」をどう計算するかが、改正法で明確化されました。

不相当な対価による有償行為の取扱い
不相当な対価による有償行為とは、3000万円の土地を100万円で売却するような行為をいいます。このような行為を、実質的な贈与行為として「②被相続人が贈与した財産の価額」の計算に含める場合の要件が、改正法で明確化されました。

参 考
遺留分計算における贈与の取扱いの変更(2018年改正)は、こちらをご覧ください。

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【ポイント3】遺留分侵害額の算定方法の一部変更

2018年の法改正では、遺留分侵害額の算定方法についても一部見直しが行われています。

遺留分侵害額の算定方法

改正内容を解説する前に、遺留分侵害額の計算方法を説明しておくと、以下のとおりです。

遺留分侵害額
=遺留分
-遺留分権利者の特別受益の額
-遺留分権利者が相続によって得たプラスの財産の額
+遺留分権利者が相続によって負担する債務の額

遺留分の額は、上で解説した遺留分の算定基礎額に、法定相続人ごとに認められる遺留分の割合をかけて計算します。

改正内容は次の2点です。以下、順番に解説します。

ポイント

  • 「遺留分権利者が相続によって得たプラスの財産の額」に関するもの
  • 「遺留分権利者が相続によって負担する債務の額」に関するもの

未分割の財産がある場合の計算方法の明確化

1点目は、「遺留分権利者が相続によって得たプラスの財産の額」の計算に関する改正です。

遺留分のある法定相続人が相続によってプラスの財産(積極財産)を得ていれば、その金額の分だけは、遺留分の侵害はないということになります。

ところが、遺産分割が終わっていない場合(つまり相続人が遺産をまだ受け取っていない場合)に、この「遺留分権利者が相続によって得たプラスの財産の額」をどのように算定すべきかという問題があり、考え方が分かれていました。

改正法では、計算方法を法律上明らかにしました。具体的には、遺産分割が終わっていない段階でも、具体的相続分(ただし寄与分は考慮しない)に従って遺産を取得したものとみなして、遺留分侵害額を計算することとされています。

2点目は、遺留分侵害額計算の際の相続債務の扱いについての改正です。この点は項目を改めて解説します。

遺留分侵害額計算において相続債務の扱いの変更点

さきほど解説した遺留分侵害額の計算方法において「遺留分権利者が相続によって負担する相続債務の額」を加えるのは、遺留分権利者が相続債務を弁済した後にも、遺留分権利者に一定の財産が残るようにするためです。

たとえば・・・

ある法定相続人の遺留分が800万円で、相続によって負担する債務の額が200万円だとすると、200万円の借金を返しても遺留分がなお800万円残るように、800万円に200万円を加えた1000万円を遺留分侵害額として、贈与を受けた者から1000万円を金銭で受け取るのです。

事業承継の際に遺留分侵害が生じるケース

ところで、お亡くなりになった方が生前に事業を営んでいて、その事業のために金融機関から借入れをしていたとします。お亡くなりになった方の法定相続人が二人の息子であって、長男が事業を引き継いでいます。

事業を引き継ぐ際には、事業に関連する資産も引き継ぐのが通常であるため、この事例でいえば、事業を引き継いだ長男が、次男の遺留分を侵害し、長男は次男にその侵害分のお金を支払わなければならない場合があります。

また、お亡くなりになっていた方の債務(相続債務)は、当然に2分の1ずつに分割されて、二人にそれぞれ引き継がれます。上の例で、金融機関からの借入れ額が1000万円であれば、次男は500万円の債務を相続します。

この場合、上で説明したように、次男が長男に遺留分侵害額請求権を行使すれば、長男は、次男が相続した債務の額である500万円を上乗せして支払わなければなりません。

事業承継の場面における相続債務の返済ニーズ

一方で、次男が金融機関の債務をきちんと返済してくれるか分からないため、長男としては、先に自分で全額を返済してしまいたいと考える場合もあります。

金融機関から借入れをする際には、事業に用いる資産に担保権が設定されている場合もあり、次男が債務を返済しなければ、担保権が実行されて、事業に支障が生じる可能性もあるためです。

長男は、次男の分の500万円の債務を返済すれば、その分のお金を次男に対して請求することができます(これを求償といいます)。しかし、遺留分を侵害しており、次男にお金を支払わなければならない一方で、次男の借金を返済した上で次男にその分のお金を請求するというのも手間です。

改正法の内容

そこで、改正法では、遺留分権利者から遺留分侵害額請求権の行使を受けた受遺者等が、当該遺留分権利者の負担する相続債務について、弁済などの行為をした場合には、その金額の限度において、遺留分侵害額請求権の行使により受遺者等が負担することとなった金銭債務の消滅を請求できることとされています。

たとえば・・・

上の例で、長男が金融機関に次男の相続した債務である500万円を弁済すれば、長男は、次男から遺留分の侵害であるとしてお金を請求された場合に、500万円分を消滅させることができるのです。長男は、次男からわざわざ500万円を回収する必要がありません。

これによって、長男は、次男から遺留分侵害額請求権を行使される可能性がある場合でも、次男が引き継いだ相続債務を安心して返済することができます。

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いかがでしたでしょうか?

今回解説しました、2018年の法改正における、遺留分制度についての改正内容は次の通りです。

ポイント

  • 遺留分減殺請求権から遺留分侵害額請求権に変わる
  • 遺留分の計算の際の、贈与の取扱いが一部変わる
  • 遺留分侵害額の計算の際の、未分割の財産の取扱いが明確になった
  • 遺留分侵害額の計算の際の、相続債務の取扱いが一部変わる

これからの生前対策では、これらの改正内容も意識した対策が必要になります。また、遺留分をめぐる問題は、争いにもなりやすいため、専門家に相談した上で対策を練ることが重要となります。

遺留分も考慮したうえでの生前対策の立案や、遺留分をめぐる争いは、「相続財産を守る会」の弁護士にお任せください。

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弁護士法人浅野総合法律事務所は、銀座(東京都中央区)にて、相続問題、特に、遺言・節税などの生前対策、相続トラブルの交渉などを強みとして取り扱う法律事務所です。 同オフィス内に、税理士法人浅野総合会計事務所を併設し、相続のご相談について、ワンストップのサービスを提供しております。

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