事業承継を検討するときに、現在の経営者が、「会社を辞めたくない」「事業を後継者に譲りたくない」と考える大きな要因は、「引退後の人生プランに対する不安・心配」にあることが少なくありません。
事業承継に成功した社長ばかりで、皆幸せな第二の人生を歩めていれば、事業承継への心理的ハードルも下がるのでしょうが、実際にはそうでもありません。会社経営から離れたときから「抜け殻」のような人生を過ごす社長も実際にいます。
しかし、漠然とした引退への不安感で、事業承継を先延ばしに延期し続けると、準備が不十分なまま、引退時期を迎え、リスクが増大することもあります。
そこで今回は、事業承継を検討している会社経営者に向け、引退後の人生プランと、幸せな第二の人生を歩むための注意点を、相続・事業承継を多く取り扱う弁護士が解説します。
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引退後の人生プランが心配になる経営者の考え方とは?
事業承継のとき、会社経営者の引退時期を決めるのに大変な苦労が必要となります。会社経営者にとって、仕事は人生そのもの。このような考え方が、事業承継の時期が先延ばしにされやすい理由となっています。
そこで、引退後の人生プランが心配だという会社経営者の社長に向けて、まずは、現状自分が次のような考え方を抱いているときに、その考え方の原因が「引退後の不安・心配」にあるのではないかと気付いて頂く必要があります。
ポイント
会社の事業を発展させることだけが生きがいである。
自宅に居場所がなく、会社で仕事をしている時間が一番楽しい。
会社の事業がうまくいかなければ、死んだのと同じだ。
これらの考え方は、一見すると、「自分の仕事が好きだ」という立派な考え方であり、何ら問題がないかのようにみえます。しかし、その根底には、「会社、事業を辞めたら、どうなってしまうのだろう」という、引退後の人生への不安があるのではないでしょうか。
このことからも、会社経営者である社長にとって、会社、事業を引退した後の、第二の人生プランを設計し、会社、事業以外の生きがいを見つけることが重要です。
引退後の人生設計、第二の人生の決め方は?
さきほど示したような「仕事こそが生きがい」という人生を選択している会社経営者はとても多く、創業社長、オーナー社長ほど、そのような考えを抱きやすい傾向にあります。
後継者の立場にある息子などからしても、以上の考えをもつ親に対して、事業承継を強く迫れば、「生きがいを奪うつもりか」とますます反発を抱き、相続・事業承継が円滑に進むハードルとなってしまいます。
そこで、今回は、事業承継に成功した経営者、アーリーリタイアメントを達成した社長が、引退後の人生プランとして選択することのある具体例を、弁護士が示しておきます。第二の人生プランの人生設計を考える参考にしてください。
家族との時間を大切にする
「24時間働けますか」という精神で、しゃかりきに働いてきた会社経営者にとって、家族と一緒にゆっくりと時間を過ごしたことがこれまでなかった、という方もいます。
事業承継をして、会社を後継者に譲ったり、社外にM&Aをしたりした後で、はじめて家族とゆっくり海外旅行にいく時間を作ることを、引退後の人生プランとして最優先に挙げる社長も少なくありません。
これまで会社の事業に集中できるよう支えてくれた奥様や、仕事で夜の帰りが遅く寂しい思いをさせたお子さんに対して、時間を使ってあげることはとても有意義です。支えてくれたご家族と、世界一周旅行に旅立つ、という方もいます。
お金抜きにやりたいことを追及する
会社・事業を発展させなければならないことは、会社経営者のトップとしての使命です。特に、従業員を雇用していると、会社の業績悪化はすなわち、社員やその家族の人生を台無しにしてしまう可能性もあります。
しかし、事業承継をした後の第二の人生では、「経済的合理性」だけを追求してやりたいことを決める必要がなくなります。
「ビジネスとしてお金が儲かるかどうか」、という採算を度外視してこそ、自分の本当にやりたいことが初めて見えてきた、という方もいます。それこそが、引退後の人生プランとして、第二の人生で進むべき道です。
会社・事業に携わり続ける
事業承継を終了し、会社を後継者に権限移譲したり、M&A(事業売却)に成功したりした場合であっても、完全に会社・事業から離れなければならないという選択肢ばかりではありません。
「仕事こそ我が生きがい」と考えていた会社経営者にとって、突然全ての生きがいを奪われるのは、生きながら死んでいるも同然です。徐々に会社から離れていくものの、できる範囲で会社・事業に関わり続ける、という第二の人生を選択する道もあります。
従業員や、後継者社長に権限移譲しながら、「会長」「顧問」「業務提携者」として、会社の事業に関わり続けるケースです。残された会社にとっても、長年の経験からのアドバイスはとても有益で、会社の発展に役立ちます。
社会貢献・ボランティアをする
採算を度外視して自分の時間を使うことができることから、これまでお世話になった人に恩返しをすることはもちろん、究極的には、地域社会など、公に奉仕することに、第二の人生の時間を使う経営者も多いものです。
会社経営で築いた経験やノウハウ、資金的な余裕を生かし、社会活動家として、利他的な貢献をする人生も素晴らしいです。
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いかがでしたでしょうか?
今回は、事業承継を考えるにあたって障害となりうる、引退後の人生への心配・不安を払しょくするため、引退後の人生プラン、第二の人生設計について、例をあげながら弁護士が解説しました。
引退後の人生設計は人それぞれであり、正解はありません。しかし、何も考えていないうちに、肉体的な衰え、精神的な疲労などによって強制的に引退タイミングを迎えてしまうと、事業承継を成功させることが困難となってしまいます。
「相続財産を守る会」では、多くの事業経営者とお話をし、顧問弁護士としてサポートした経験のある弁護士が、事業承継後の人生に関するささいなお悩みから、親身にお聞きします。