田舎の実家の不動産(土地・建物)を相続することとなったとき、相続すべきか、それとも相続放棄すべきか、お迷いになる方もいるのではないでしょうか。
「一旦相続してから考えよう」と思っても、ひとたび相続をして所有権を得たら、その後所有権を放棄することはできません。田舎の不動産(土地・建物)の問題は、所有権放棄できないのはもちろん、売却も有効活用もできずに空き地、空き家となってしまうことが少なくありません。
そこで今回は、実家のご家族がお亡くなりになり、田舎の不動産を相続することとなった方に向けて、相続すべきか、相続放棄すべきかについて、相続問題を多く取り扱う弁護士が解説します。
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田舎の不動産を相続するリスク・デメリットは?
田舎の不動産を相続によって承継し、所有権を取得することには、リスク、デメリットがあります。このリスク、デメリットを理解せずに安易に不動産を相続する方針を選択すると、将来後悔することともなりかねません。
特に、既に実家を離れて都会で生活をしている場合には、田舎の不動産を相続しても管理したり有効活用したりすることができないため、リスクはより増大します。
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固定資産税を支払わなければならない
固定資産税とは、不動産の所有者に対して毎年課税される地方税です。不動産を所有していると、毎年必ず固定資産税を支払わなければなりません。固定資産税の納付方法は、毎年1月1日の不動産の所有権者に対して、納税通知書(課税明細書)が送付されて、これに従って支払を行います。
利用する価値のない不動産や、少なくとも、相続人にとっては利用することのない実家の田舎の不動産であったとしても、所有していれば必ず、固定資産税を納税する必要があります。
また、所有権を移転するだけでも、登録免許税、不動産取得税や、司法書士費用、不動産会社への仲介手数料など、多くの費用がかかります。
老朽化に対応しなければならない
建物というものは、使っていなければ老朽化が進むのも早いものといわれています。実家の田舎の不動産(土地・建物)を相続によって取得したものの、利用せずに放置しておいた場合、老朽化が進み、倒壊、腐食してしまう危険が十分にあります。
相続した田舎の不動産を放置し、空き地、空き家にしてしまった結果、建物が倒壊して通行人に被害を与えたり、空き家への不法投棄物が土壌汚染を進行させたりした場合には、その責任は、「所有者の管理不足」にあるとされる危険があります。
その結果、田舎の不動産が空き地、空き家となり、このような問題、損害を第三者に与えたときには、所有者が、損害賠償責任を追及されることとなります。
売却処分・有効活用できない
既に実家を離れて都心で生活しており、田舎の不動産を利用する可能性がないとしても、高値で売却してお金に換えることができたり、他人に賃貸して賃料収入を得るなど有効活用できたりすれば、あまり問題はありません。
しかし、田舎の不動産は、へき地であればあるほど、次のような問題点から、売却処分、有効活用が困難となるケースが少なくありません。
ポイント
- 交通の便が悪く、交通費や移動時間がかかる
- 広すぎる土地で、需要がない
- 土地の形状が悪く、分けづらい
以上のように、田舎の不動産には需要がなく、どれだけ安い売り出し価格であったとしても買主が見つからず、固定資産税、管理費、家の解体費用などを負担しながら所有し続けなければならなくなるリスクがあります。
田舎の不動産を相続放棄するには?
田舎の不動産を所有することのデメリット、リスクをご理解いただけましたでしょうか。田舎の不動産は、ひとたび所有すると、売却処分も有効活用もできず、所有権を簡単には手放すことができません。
これに対して、相続の時点であれば、相続放棄の手続をとることによって、田舎の不動産の所有権を取得しないことが出来ます。
相続放棄とは、家庭裁判所に相続放棄の申述をすることによって、相続開始時点にさかのぼって相続人ではなかったものとして取り扱われる手続で、この相続放棄を行うことで、相続財産(遺産)を一切取得しないことができます。
相続放棄は、原則として、相続が開始したことを知ったときから3か月以内に、家庭裁判所に申述手続をとる必要があります。相続人がなにも手続を行わずに3か月が経過すれば、相続放棄はできなくなり、田舎の不動産は相続しなければなりません。
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田舎の不動産を相続放棄するときの注意点は?
田舎の不動産を相続したくないがために相続放棄を選択するときに注意しなければならないのは、他の相続財産(遺産)も一切相続することができなくなるという点です。
相続放棄は、そもそも相続開始時点にさかのぼって相続人ではなくなるのですから、不要な不動産だけでなく、その他の財産もすべて相続できなくなってしまうのです。
相続財産(遺産)が、田舎の不動産しか存在しなければ、相続放棄を選択した方がよいですが、他にも多くの相続財産(遺産)がある場合には、相続放棄によって他の財産を入手できなくなるデメリットと比較して検討しなければなりません。
田舎の不動産の遺産分割協議の注意点は?
ご家族がお亡くなりになり相続が開始したときに、遺言書が存在しない場合には、「誰がどの財産を相続するか」を相続人全員で話し合うために、遺産分割協議を行います。
相続放棄をしなければ、相続人として遺産分割協議に必ず参加して、田舎の不動産の所有権を誰が相続するかを決めなければなりません。
田舎の不動産を所有することにデメリット、リスクが多くあることは、既に解説したとおりですが、これらはあくまでも、既に実家を離れて都心で生活する人にあてはまることです。
実家付近で生活していたり、実家で両親と同居していたりする兄弟がいるときには、その人が、田舎の不動産(家・土地)をすべて相続し、その他の相続人は、田舎の不動産以外の相続財産(遺産)を分配するという遺産分割の方法をとれば、田舎の不動産も有効活用できる可能性があります。
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田舎の不動産の共有持分権を放棄するには?
最後に、田舎の不動産が、相続などの理由によってご家族の共有となっている場合に、共有持分権を放棄する方法と、その際の注意点について、弁護士が解説します。
共有持分権の放棄は、所有権の放棄とは異なり、他の共有持分権者に対して意思表示をすることによって放棄することができ、このとき、他の共有持分権者の同意までは必要ありません。実際に共有持分権の放棄をするときは、後で意思表示を証拠とすることができるよう、配達証明付き内容証明郵便などで行いましょう。
共有持分権の放棄には、共有持分権者の同意はいらないものの、放棄に基づく相続登記は、共同で行わなければならないため、実際には共有持分権者の協力が必要となります。
田舎の不動産が共有状態のとき、共有持分権の放棄を、ある1人の共有者が行うと、その田舎の不動産は、他の共有者が、共有持分に応じて取得することとなります。
そのため、共有持分権者の誰もが不要と考える田舎の不動産の場合には、共有持分権の放棄は「早い者勝ち」の状態となり、「押し付け合い」の状態となります。したがって、争いとなることが予想されるときは、共有持分権者間で、十分な協議が必要です。
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いかがでしたでしょうか?
今回は、実家のご両親がお亡くなりになるなどして、田舎の不動産(土地・建物)を相続することとなった方に向けて、利用価値の少ない田舎の不動産を放棄する方法について、弁護士が解説しました。
田舎の不動産について相続対策を怠ると、田舎の空き地、空き家を増やし、所有者自身も大きなリスクを負うこととなります。相続放棄、遺産分割協議や共有持分権の放棄などの方法によって、有効活用できない田舎の不動産を保持し続けない努力が必要です。
「相続財産を守る会」では、相続に強い弁護士だけでなく、相続不動産を多く取り扱う不動産会社のパートナーとともに、都心部の利用価値の高い不動産だけでなく、田舎の不動産もまた、積極的にお取り扱いしています。安心してご相談ください。