相続した不動産を、売却しなければならない必要性に迫られることがあります。相続は、突然起こるもので予想ができません。不動産を得られることは嬉しいでしょうが、利用する予定のない遠方の家や別荘などの場合、売却したほうが有益です。
相続した不動産を利用する予定がない場合には、不動産を売却し、売却益を相続人間で分け合ったほうがよいでしょう。
普段から不動産売買に精通している不動産会社や大家さんとは異なり、相続で突然不動産を手に入れた方から、「不動産売却の流れがわからない」というご相談が多く寄せられますが、ご安心ください。
今回は、相続した不動産を売却するときの流れと、契約のポイントについて、相続不動産を多く取り扱っている不動産会社の立場から解説します。当社は、相続人の立場にたって、有利な売却となるよう、トラブルを回避できるようサポートします。
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相続した不動産の価格を調査する
相続した不動産の価格は、相続税申告のときに、税理士から教えてもらっているかもしれません。遺産分割の話し合いのとき、弁護士から聞いているかもしれません。しかし、実際に売却するときの評価は、相続税・遺産分割のときの価格と異なることがあります。
相続税のとき不動産の評価をするのは、あくまで相続税の申告・納付のためであって、「実際に不動産がその価格で売れること」を、国も税理士も補償してくれるわけではないからです。
不動産情報サイトでの検索
相続した不動産の売却を不動産会社に一任する場合であっても、不当に低い価格で買いたたかれないよう、不動産価格の一応の相場観を調べておきましょう。相続した不動産の価格は、次の方法で調べます。
一般に募集している不動産であれば、インターネット上の不動産情報サイトでも、おおよその相場の目安がつかめることもあります。周囲の不動産(土地・建物)がどれくらいの価格で売り出されているかも見ておきましょう。
大手不動産会社の簡易査定
簡易査定は、あくまでも「簡易」の査定です。
不動産は個別性が非常に強いので、同じマンション内、同じエリアの物件だったとしても、階層や立地や方角など条件が異なるため絶対的な数字ではないということを理解しておく必要があります。
大手に一括査定を依頼するだけでなく、実際に相続した物件周辺の不動産会社への査定依頼をかけてみるというのも一つの方法です。
複数の不動産会社への見積もり依頼
不動産会社に、相続した不動産の見積もりをお願いするときは、複数社に査定を依頼します。
より正確な評価額を知りたい場合は、不動産鑑定士という専門士業に不動産の鑑定を依頼する手もありますが、費用は発生します。ただし、不動産鑑定士が必ずしも不動産の実勢価格に関する相場観を持っているとは限りません。
なお、調べた売却価格が、そのまま相続人間で分け合えるわけではありません。仲介業者への仲介手数料や税金などで、相当額が控除されるからです。
不動産会社と契約を締結する
次に、おおよその相場がわかったら、相続した不動産の売却を担当してもらう不動産会社を選定します。不動産会社は、相続不動産を多く取り扱っていて、弁護士や税理士など相続の専門士業からも信頼の厚い業者がお勧めです。
不動産会社が決まったら、不動産会社との間で「相続した不動産の売却をお任せする」という内容の契約を締結します。この契約を「媒介契約」といいます。
不動産会社と締結しておくべき「媒介契約」には、次のように種類があります。契約書は通常、不動産会社から出されたものに署名押印することが多いでしょうが、その契約書が次のどの種類にあたるのかは、しっかり説明を受けるようにしてください。
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専属専任媒介契約
専属専任媒介契約とは、相続した不動産の売却を、特定の1つの不動産会社だけに任せるという内容の媒介契約です。
専属専任媒介契約を締結するメリットは、売れないと会社の信用にかかわるため、不動産会社が必死に売却の努力をしてくれることです。一方でデメリットは、その不動産会社が客付けすることができなければ、相続した不動産を契約期間中は処分できないことです。
契約の有効期間は、3か月以内とされているほか、専任媒介契約を交わす場合には、法律上多くの制限があります。
専任媒介契約
専任媒介契約とは、1社の不動産会社に売買仲介をお任せするという点では専属専任媒介契約と同様ですが、不動産会社の紹介ではなく自分で買主を探してくることは禁止されていない契約のことです。
専任媒介契約のメリット・デメリットは、専属専任媒介契約と同様ですが、不動産会社の努力が足りなくても、自分で買主を見つけてこれば不動産を処分できます。その場合、仲介手数料の節約にもなります。
一般媒介契約
一般媒介契約とは、複数社の不動産会社に対して売買仲介を依頼することが可能となる内容の媒介契約です。広く情報を公開して、不動産の買主を探すことができます。
一般媒介契約のメリットは、広く情報を公開することで、さまざまな不動産会社が、相続した不動産の売買のために尽力してくれることです。一方でデメリットは、有力な不動産会社があっても、専任媒介ほど努力してくれない危険があり、売却まで時間がかかることです。
相続した不動産の買主との契約を締結する
相続した不動産の売買は、「契約」によってルールが決められています。つまり、不動産売買契約です。合意を客観的な証拠に残すために、契約を交わすときには、契約書の締結が必要です。契約書を締結したらまず「手付金」を払うことが一般的です。
相続した不動産を、媒介契約を結んだ不動産会社に客付けしてもらい、買主が決定したら、いよいよ買主との間での売買契約の締結を行います。不動産売買契約書は、不動産会社が準備することがほとんどですが、一応内容について理解しておいてください。
売買契約時に、相続した不動産を売却する売主側でそろえておくべき必要書類などには、次のものがあります。詳しくは、売買契約に立ち会う不動産会社か司法書士の指示にしたがってください。
ポイント
- 手付金
- 印紙(売買契約書に貼付する)
- 印鑑(実印)
- 印鑑証明書
- 不動産会社への仲介手数料
- 本人確認書類(運転免許証、パスポートなど写真付きの公的な身分証明書)
相続不動産を売買する場面で、仲介業者の目的は、「売買契約を締結させること」に置かれがちです。相続人であるあなたの味方となって親身になってくれるかは会社次第です。契約書チェックは、契約者の責任です。
難しい不動産の売買契約書のチェックに自信がない方、不安を感じる方は、取引額が高額な場合、弁護士に相談したほうが安心です。不動産売買契約の注意点は多く存在しますが、特に注意したほうがよい点を解説します。
「相続財産を守る会」のこの解説のうち、次の契約書に関する解説部分は、契約書の専門家である弁護士が監修しています。
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浅野英之"]
弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士の浅野です。この解説のうち「契約書」についての部分は、私が監修しています。
当事務所では、相続問題を得意として扱っています。その中には、不動産を相続された方が、相続したけれども利用しない不動産を売却したいという依頼が少なくありません。
当事務所では、相続問題のご依頼をいただければ、不動産の売買契約書のチェックについても、当然弁護士が親身に対応します。
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売買の対象不動産
相続した不動産を売却する売買契約書をチェックするとき、まずは、対象の不動産に間違いがないかを確認してください。
売買契約書の対象物件は、「不動産の表示」などという欄に記載されていますが、登記簿謄本に記載された情報のとおり、正確に記載されて特定されている必要があります。
売買代金、支払日
次に、合意した売買代金、支払日が記載されているかを確認してください。売買代金を、支払日までに用意できないとき、「債務不履行」となって違約金が発生するリスクがあるからです。
売買代金の金額が妥当であるかについても、さきほど解説した概算額の調査とかけはなれた金額でないかどうか、念のため再確認しましょう。
手付解除、違約金
手付解除とは、相続した不動産を売却する側の立場からみると、手付として売買代金の一部を先に支払っておき、手付を放棄すれば、理由にかかわらず売買契約を解約することができるという制度です。
手付金額が妥当であるかどうか(一般的に、代金の20%程度)、手付解約のできる期限について確認します。また、債務不履行の場合に発生する違約金についても、不当に高額でないかどうかチェックしてください。
ローン特約
相続した不動産を売却するとき、売買契約書に「ローン特約」という条項が記載されていることがあります。
これは、不動産の売り主が、融資(ローン)を組んで不動産を購入するとき、銀行などの金融機関から融資の承認が下りなかったときには売買契約を解除できるという内容の条項です。
反社会的勢力排除条項
不動産売買契約書に記載された反社会的勢力排除条項とは、「私は暴力団などではありません。」ということを明らかにし、約束する内容の条項です。相続不動産を売却する側だけでなく、買い手側も暴力団などではないことを確認してください。
また、犯罪収益移転防止法によるマネーロンダリングが厳しく禁止されており、身分証明書などによる適切な身元確認が、契約時には重要となります。
相続した不動産の登記手続きを行う
相続した不動産の売買契約を締結したら、代金と引き換えに引渡しを行います。具体的には、不動産の所有権移転登記を行います。
このとき、相続をした当初に、遺産分割をすみやかに行い、相続登記をしている場合には、既に相続人が登記名義人となっているはずです。これに対して、相続登記をしていなかったり、遺産分割が済んでいなかったりすると、まだ故人名義となっていることがあり、売買ができません。
相続登記はもちろん、相続した不動産を売買する際の登記についても、登記手続きの専門家である司法書士に依頼することが一般的です。
決済日までに代金を準備することができなかったり、代金が準備されているのに登記の必要書類がそろっていなかったりといった場合、「債務不履行」となり、不動産売買契約書にしたがった違約金を請求されることがあります。
不動産相続は、「相続財産を守る会」にお任せください!
いかがでしたでしょうか?
今回は、相続財産(遺産)の中に不動産のある相続のうち、「相続した不動産を売却・処分したい」というご相談をお持ちの相続人の方に、相続不動産を売却する流れと契約のポイントについて、不動産会社の立場からわかりやすく解説しました。
例えば同居の配偶者(夫または妻)が相続する場合などはよいですが、相続した不動産を利用することができない場合もあります。
賃貸マンションを建てる、駐車場にするなど有効利用するのも手ですが、そこから得られた収入が相続人間のさらなる争いの種になりそうな場合、いっそのこと売却して売却益をわけたほうがメリットがあるケースも少なくありません。
「相続財産を守る会」に所属する不動産会社は、相続不動産の売却について多数の経験があるだけでなく、相続に強い弁護士、税理士、司法書士などの多数の士業から信頼された解決実績をもとに、徹底サポートいたします。