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遺産分割

相続分以上の財産を得ると、別の相続でも特別受益になる?【相続Q&A】

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今回の相続相談は、ある相続で、生前贈与、遺贈などの方法によって相続分以上の財産を取得した場合であっても、その後に起こった別の相続では「特別受益」とされないのか?という相談です。

特別受益とは、被相続人の生前に特別な利益を受けた場合に、その分相続財産(遺産)を取得できる割合が少なくなる制度です。

別の相続、例えば、過去に起こった祖父母の相続や父の相続などで多くの財産を得ていたことは、「特別受益」になるのか?ならないのか?というのが今回の解説です。実際のご相談にお答えする形で、相続に強い弁護士が、Q&A形式で回答します。

参 考
財産のもらいすぎを「特別受益」で調整する方法は、こちらをご覧ください。

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相続相談の内容

質問

祖父の相続で、私の母(祖父からみた「子」)との遺産分割協議をし、多くの財産をもらい受けました。そのため、祖父の死亡によって開始された相続では、祖父の相続財産(遺産)は、すべて私が取得することになりました。

その後、私の母も亡くなりましたが、そのとき、私の兄から、「祖父の相続のときには全ての財産を相続したのだから不公平だ」、「実際には、母が相続をしていれば自分(兄)の取分になった分は「特別受益」として今回の相続で清算をすべきだ」といわれました。「遺留分減殺請求だ」ともいわれました。

確かに、祖父の相続のときに私がすべての財産を相続したときは、兄は母のいうことに従わなければならない状態で、不満がたまっていたのではないかと思います。当然ながら、私が法律上もらえるはずの法定相続分よりも多くもらっています。

この場合、私は、母の死亡によって開始された相続の際に、兄に対して、特別受益として財産の一部を渡さなければならないのでしょうか。自分の子の将来のことを考えると、できる限り多くの財産を相続しておきたいです。

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相続専門家(弁護士)の回答

回答

弁護士の浅野です。今回のご相談について、私が回答します。

「特別受益」とは、被相続人の生前に、遺贈や生前贈与によって特別の利益を受けたときに、その分を相続財産に加算して計算する「持戻し」により、相続時に得られる財産が少なくなるという制度です。その目的は、相続人間の公平にあります。

しかし、「特別受益」は、生前に利益を得ていればどのような場合でも認められるわけではなく、その対象は、民法903条で「遺贈」と「婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の維持としての贈与」に限定されています。

そのため、祖父の相続の際に多くの財産を取得したとしても、母の相続の際には、この2つのいずれにも該当せず、「特別受益」として考える必要はありません。

同様に、祖父の相続の際により多くの財産を得たとしても、その後に起こった母の相続で、遺留分を侵害されるような遺言、生前贈与が行われたときは、遺留分減殺請求権によって、より多くの財産をもらった兄から、財産を取り戻せます。

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特別受益が認められる場合と、計算方法は、こちらをご覧ください。

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遺留分減殺請求を弁護士に依頼するメリットは、こちらをご覧ください。

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ーー祖父の相続のときには、母が生きており、兄は文句もいえない状態で遺産分割協議にしたがってきましたが、母が死亡して母の相続が開始された際には、あらためてこの協議結果にも文句がいえるのでしょうか?

浅野:前に起こった相続で、遺産分割協議の結果、ご相談者が多くの相続財産(遺産)を得ることになったのであれば、その後にこれを覆すことはできません。

その後に起こった母の相続において、法定相続分どおりに分割した結果、祖父の相続、母の相続をあわせて考えると、ご相談者にくらべて兄のほうが相続した財産が少ないとしても同様です。

祖父の遺産分割協議をやりなおさなければならないとしたら、このときに錯誤や脅迫があったり、非常に重要な財産がもれていたり、相続人全員が参加していなかったりしたケースです。

その場合、祖父の相続人の1人である母がすでにお亡くなりになっているため、法定相続分や遺留分の計算が複雑になりますし、相続税、贈与税の計算が必要となります。詳しくは、相続を得意とする弁護士にご相談ください。

参 考
遺産分割協議のやり直し、無効・取消については、こちらをご覧ください。

遺産分割協議が終了した後になって、やり直したいという相続相談に来られる方がいます。ご相談者にも特別なご事情がおありでしょうが、一度成立した遺産分割協議を取消、撤回したり、やり直したりすることは、そう簡 ...

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――父の相続の際に、兄から相続分の譲渡を受けたり、遺産分割協議の結果として法定相続分を越える財産を私が取得したような場合であっても、母の相続のときには考慮しなくてもよいですか?

浅野:同様に、別の相続で得た利益を、特別受益によって清算する必要のない場面です。

ご相談のケースで、父の相続の際に、法定相続分を越え、さらに、兄の遺留分すら侵害する相続財産(遺産)を取得したとしても、母の相続の際に「特別受益」となることはありません。

ただし、父の相続の際に、ご相談者の相続分が、兄の遺留分を侵害していた場合には、「父の死亡から1年」以内であれば、母の相続における遺産分割に納得のいかない兄は、ご相談者に対して、(父の相続に関する)遺留分減殺請求権を行使することができます。

ーーでは、父の相続の際に、母から相続分の譲渡を受け、その母の相続の際には、「相続分の譲渡」が遺留分の計算基礎となる贈与にはあたらないのでしょうか。

浅野:この点は、最高裁判例(最高裁平成30年10月19日判決)が出ており、「相続分の譲渡」を受けたまさにその人の相続の場合には、遺留分算定の基礎となる「贈与」にあたり、「特別受益」となる場合があることが認められています。

ただし、この場合にも「相続分の譲渡」がいくらと評価されるのかは、相続財産に含まれたプラスの財産、マイナスの財産を考慮して考えなければならないこととされています。

参 考
遺留分減殺請求権を行使された側の対応は、こちらをご覧ください。

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